アピスト飼育のすゝめ
アピスト飼育のすゝめ。
--心構え編--
アピスト飼育に「こうしたら成功します」というマニュアルは一切ございません。
上級者の真似をしても上手く行かない事も多く、
予備知識なしでとても雑に飼育しても繁殖しまくってしまったりと
飼育者毎の「うちではコレがベスト」が必ずございます。
自身でこの「うちではコレがベスト」をお探し頂き、
その過程での悲喜交交を楽しんで頂ければと思います。
(喜びだけがあるのが一番ですけどねw)
勿論お客様の「これがベスト」を探すプロセスにおいて発生する数多の疑問を
少しでも解決出来るよう、当店でもお客様の身に立って一緒に頑張りたいと思っております。
質問や相談等いつでも気軽にどうぞ。
アピストグラマってどんな魚?
南米の広範囲に生息する小型シクリッド(ドワーフシクリッド)に属する観賞魚です。
ベタなどと同様に各ヒレをこれでもかと広げフィンスプレッティングを行うのが特徴です。
ガラスに反射した自分に威嚇するアピスト
他の観賞魚にはない体色の変化や行動もとてもおもしろく、小型水槽でも繁殖が楽しめる点が人気ですね。
産卵形態はケープスポウナーと呼ばれる物で、卵を外から隠すように天井側に産み付けることが多いです。
たまにガラス面に産む猛者もおりますが。笑
流木のくぼみに産卵しているアピストのペア
当店推奨の産卵床「ダイソー植木鉢」
これを割ることで出来上がる、通称"匠の植木鉢"笑
この様な形に割るとめっちゃ生みやすいです。
アピストの特性。
ほとんどのアピストグラマに言える事ですが、
ちょっと厄介な側面も持ち合わせている魚でもあります。
それは、雌雄間の激しい争いです。
時には買ったばかりのアピストを死なせてしまう事もあるでしょう。
これを難しいと思う方も間違いなくおられるかもしれません。
平常時、オスはメスを親の仇と言わんばかりに追い回します。
それに耐えきった?逃げ切った?なんとも形容し難いですが
オスの猛攻に負けないメスは全身を黄色に変色させ(これを婚姻色と呼びます)、オスに対し一歩も引くことなく向き合います。
コリドラスはTポジションが有名ですが、アピストはメスがお腹(お尻)をオスの眼前に見せ水平に泳ぐような不思議な姿勢を撮ります。
繁殖前に見られる行動。
この時のアピストの綺麗さは目を奪われます。
時折尾びれでオスをペチペチと叩く仕草を始めます。
これを見た時は「そろそろ産むな」と思っていいかと思いますが、油断は禁物!!
アピストの繁殖とその先。
アピストは不思議なもので個体差というか性格の差も顕著です。
一切争わずにやたら産卵するペアも居れば、互いにボロボロになるまで争ってから産むペア、そして一切争わず一切産まないペア、本当に様々です。
*ブリードが進んでいるアピストの多くはワイルド種ほど極端ではなく飼育しやすく増えやすい面があります。
そしてやっと醍醐味とも言える産卵を行いますがそこからもまたアピストらしい楽しみと不安がやってまいります。w
(結構めんどくさそうな魚ですよね、アピストw飼うとハマりますけどね、これもw)
産卵後のメスはその色味からしてかの有名な「超サイヤ人」化します。
いや・・もっとかも・・・
とにかく視界に入る物全て排除しようとします。
それまで一切敵わず追い散らされてきたはずのオスにも無双します。
マジ無双。
これが顕著なペアな場合、オスが水面近くの端っこに縦に浮かびます。
もう許してよ・・・とw
こうなると自慢のヒレも齧られたりしてボロボロにされる場合があるので、あまりにもオスが懇願の表情を見せたら産卵箱等に隔離してあげましょう。
シクリッドはペアで子育てするんじゃねぇのかよ!!!!!!!
と私も一緒に叫んであげますのでご勘弁を。
アピストの好む水とは?
多くのアピストが弱酸性の軟水を好みます。(トリファスキアータ、ボレリーなど一部中性付近のやや硬度のある水を好みます)
ブラジル原産のアピストの多くがかなり低いpH帯の超軟水を好みます。
pH4.5 GHKH0 TDS一桁
なんて凄まじい環境で生息しているからです。
ペルー原産のアピストはここまでこだわらなくても問題ない種類が多いですね。
ですので出来れば多少アピスト飼育に慣れるまでは一度くらいはブリード個体を飼育してからがよいです。
難しいからというか・・・高いんです、ブラジルアピストw
そして多くの方がそんな特殊な水作れないよ・・・と思うでしょう。
アピストが好む水つくり
基本的に現在熱帯魚が上手く飼えているのであればその感じでほとんどのアピストは問題なく飼えます。
ブラジル原産のアピストもやりたいし・・うちは全然pH下がらないんだよ・・・
といった場合でも簡単にアピスト好みの水を作れますので掲載致します。
①バケツや発泡スチロール、余った水槽のいずれかを用意する。
②エアポンプと底面フィルターを用意する
③底面フィルターをセットし、低pHを謳うソイルをざざーっと入れて注水(カルキ抜きもいりません)
④数時間待つ
⑤完成。
後は柄杓やオイルジョッキ等で水を掬い、水換え用の水として使用するだけです。
これを汲み置きタンクと今後呼んで行きます。
アピストに限らず水換えに便利なオイルジョッキ
汲み置きタンク(ちょっと水槽汚いww)
いやいやめんどくさいよwww
となった場合は、水槽に底面フィルターとソイルで飼えますw
底面フィルターで飼育する場合はソイルの寿命が近づいて来たら少しづつソイルを入れ替えてあげましょう。
簡単な飼育用のセッティングは?
オススメは30cmキューブ(60cm二段台に4つおけるのでw)、またはL水槽です。
S水槽でもペア飼育は可能ですが繁殖まで考えるとやや厳しい部分があります。
(50匹以上になりますので)
シンプルなセッティング例
フィルターはスポンジフィルターがベストです。
外掛け式や投げ込み式でも飼育出来ますが、水流が強くならない工夫が必要です。
底面フィルター外掛け直結/プロジェクトソイル5.2
コスパの点から申しましてもスポンジフィルターがオススメです。
水草もやりたいし!という場合は小型外部の使用になるかと思いますが、シャワーパイプの穴を大きくするなど水流に気をつけてください。
特殊例ですが底面フィルターに排水スポンジフィルターw
底床はソイル、またはお好みの砂なんでもOKです。
水草水槽は別ですが、底のガラスが見えてしまうほど薄く敷くのが重要です。
アピストは周囲の色の影響を大きく受けますのでお好みの底床を見つけましょう。
薄く敷く理由として、アピストの死因のほとんどがエロモナス病です。
やたらエロモナスに弱いです。
逆に白点病などの一般的な病気には無類の強さを見せますがw
底床を啄む習性がアピストには有り、底床に糞や残り餌が蓄積しているとエロモナスに非常にかかりやすくなる為に薄く敷く事で最低限の予防を行います。
30cmキューブ水槽にスポンジフィルター(または底面フィルター)、底床は適当に薄く、そして産卵床になるものを入れればセッティング完了です。
アピスト水槽の立ち上げ。
幾ら弱酸性の軟水が簡単に作れたとしてもやはり立ち上げは難しい物です。
先述したようにアピストは水質悪化に強そうに見えて弱いです。
立ち上げの際は他の水槽の飼育水100%で立ち上げ、濾過サイクルが完成するまではこまめに少量の水換えを行いましょう。
逆に言えば、調子の良い水槽が他にある場合、その水100%で立ち上げても初日から飼育可能です。
(うちはそうしてますw
餌はブラインシュリンプ?冷凍アカムシ?
何故かネットではアピストはブラインシュリンプと散見します。
色揚げ効果も凄いとか・・・
嘘ですww
稚魚を育てる時はブラインシュリンプ頼りになりますが、人工飼料で飼育するとよいです。
とはいえ、結構選り好みがありますのでこれが良いよとは言い切れませんが、複数種の人工飼料を与えるとよいでしょう。
どの魚にも言えますが、餌は与えすぎてもよくありません。
毎日与えるならごく少量を心がけてください。
3日に一度程度でも全然充分です。
孵化してぴょこぴょこした稚魚が産まれたらブラインシュリンプを与えましょう。
*与えすぎると水質悪化して稚魚が死にますのでご注意を
パイロットフィッシュはどうしたらいいの?
初熱帯魚がアピストという方はそう居ないでしょう。
マニアックなので・・・w
という事で、他の水槽の飼育水で立ち上げればパイロットフィッシュは不要です。
混泳って出来るの?
アピストはテリトリーを持つ魚ですが、混泳は不可かと言えば全然可能です。
小さくてもシクリッドですので、シクリッド同士はNGです。
小型種との混泳はほとんどの場合問題なく可能です。
プレコは水流を好む種が多く、糞も多いので混泳は避けたほうが良いでしょう。
ベタなどの攻撃的な種も避けましょう。
シュリンプはおやつになってしまうので気をつけましょう 笑
アピスト複数種を混泳させる場合、争いは起きますがテリトリーを持てないほど多くアピストを入れると意外と平和だったりします。
ただアピストの子育てを楽しみたい、増やしたいという場合、混泳ですと稚魚がどうしても食べられてしまうのでペアでの飼育がよいでしょう。
アピストの入門種っていうと?
アピストグラマの中でも飼育難易度がとても低い物を挙げたいと思います。。
飼育難易度というと語弊がありますが、水質(pHや硬度等)にそれほど煩くなく、簡単に繁殖を楽しめる種類になりますね。
各家庭により水道水や地下水の水質にもよりますが
・中性付近(ソイル等を使用しない場合)
トリファスキアータ、ボレリー等がブリード個体が多く出回っており、比較的安価ではありますがド派手なアピストですね。
非常に入手しやすく所謂入門種の代表格と言える種になります。
中性付近を好むのでソイルを使わず砂等で飼育したい方にお勧めですね。
こまめに水換えしてあげると発色もよくなる傾向があるように感じます。
(AP.トリファスキアータ /照明の当たる角度でヒレも身体も更に青光りする)
・弱酸性付近(水草水槽やソイル使用でアピストを楽しむ場合)
アガシジィ、カカトォイデス
この二種が最も流通量の多いアピストと言えますし、ファイヤーレッドやダブルレッド、オレンジテールといった改良品種が沢山出ております。
水質問わず、健康なペアが居ればカラシン等が混泳していてもあっさり繁殖したりするので見た目の派手さも相まって初アピスト飼育にはかなりお勧めです。
(AP.アガシジィスーパーファイヤーレッド 欧州ブリード)
(AP.カカトォイデス オレンジテール 欧州ブリード)
この四種のいずれか気に入った種類をまずは飼育してみるのが良いかもしれません。
ドワーフシクリッドの魅力を堪能出来、なおかつ飼育が非常に容易ですので長く楽しめるかと思います。
いずれにせよ、アピストの魅力を体験してしまった場合は、その後必ず訪れる「やはりワイルド種の輝きが・・・・」という泥沼が手ぐすね引いて皆様をお待ちしておりますw
水質という物にある程度の理解がある、またはレッドビーを増やせる、水草を上手く育成出来ると言った方はいきなりワイルド種も簡単に飼えるでしょう。
中でもやはり流通量とアピストらしいアピストと言いますか、アピストらしい派手さを持った
アガシジィ テフェ、ビタエニアータ カレイロの二種が私的にはワイルド種では価格的にも入手のしやすからしてもアピスト入門種かなと感じております。
(AP.アガシジィ テフェ産)
(AP.ビタエニアータ)
--店長談義--
ネットで見るとこう書かれていた。
という事をそのまま実行すると高確率で死んでしまいます。
飼育方法については後述しますが、アピスト=難しい魚という考えは基本的に全く当てはまらないと思っております。
(一部本当に難しい種類も居ることには居ますが・・・。)
なぜ難しいイメージが定着してしまったかと言いますと
"難しい飼い方を好んで行う上級者"や一部のショップが回転率を上げる為に
恐らく自分たちでも絶対していないであろう飼育方法を広く喧伝しているからかなと思います。
私も多くのアピストの繁殖、飼育をしてきましたがネット上で散見する飼育方法には疑問しかございません。
アピストは簡単に増えていきますので、誰でも簡単に増やせてしまうと困る人達がいるのでしょう・・・笑
ネット上で見つかる飼い方を実践した場合、必ずとまでは申しませんが
かなりの高確率でアピストを病気で死なせ「やっぱりアピストは難しい」と思うことになるかと思います。
特殊なアピストを除けば、基本的にネオンテトラが上手く飼育できるような方なら飼育難易度はネオンテトラと大差ないと言い切れます。
大袈裟かもしれませんが、
小まめに水質を計測し、餌の分量も魚の調子や水質に合わせて考慮でき、
飼育するアピストの特徴を把握し、熟練の観察眼を持ち魚の少しの変化にも気付いて対処でき、魚を飼っているのか苔を育成してるのかわからない水槽でも気にならない。
こんな方用の飼育方法がアピストの飼育方法として一般的に広まっていると感じています。
勿論水草水槽で綺麗にレイアウトされた水槽で飼育、繁殖を成功してる方も大勢居ます。
「アピストはこなれた水を好む」という、まことしやかな概念を盲信しない事が簡単に飼育を成功させるコツだと思います。
(私は未だに「こなれた水」が何を指すのか分かりませんw)
私は飼育者として沢山のアピストの産卵に出会ってきましたが、水換え頻度も非常に多いですし、リセットもよくするので只の一度も所謂「こなれた水」という状況で産卵させた事はありません。
水換え頻度は魚の調子や水の状態に合わせて行うのが基本です。
また、水槽がもう置けない!という事情がある場合を除いて、大きなバケツや水槽を利用しpHと硬度の低い水を作る汲み置きタンクがあると非常に便利です。
用意出来ない方は水換えを高頻度で行うよりも水質を維持しつつ水質悪化をさせないように餌の量には特に気をつけましょう。
餌の上げすぎは百害あって一利なし。
水質が弱酸性の軟水を作れない場合はソイル+底面フィルターが簡単です。(もしくはピート等の使用)
1週間に1/3程度の水を換えるというのが何故か熱帯魚飼育のデフォルトの様に言われていますが、アピストに限らず1週間に1/3という何の根拠もない水換えサイクルをどんな状態でも続けるというのは危険です。
各ご家庭の水道の水質や水槽の環境はそれこそ十人十色です。
ご自身にあったサイクルを見つける事が熱帯魚飼育のスタートラインだと思います。
なお、アピストの稚魚は水質の変化に非常に敏感な為、稚魚が生まれたら一ヶ月程水換えは厳禁となります。
(水質悪化が懸念される場合は点滴レベルで換水してあげればよいかと思います)
またアピストの多くは、同程度の小型魚に比べ、水質悪化に非常に脆く一旦病気になると数日で死に至ります。
逆に状態のよい水であれば1ヶ月水換えしないでも死にません。
とにかく"魚を観察する"という事がアピスト飼育に一番大事です。
いつもより元気がないなと思ったらすぐさま何が原因かを考え対処する。
これが出来たらどんなアピスト買ってもそうそう死ぬ事はないでしょう。
いずれにしましても、飼育してみたらそんなに難しい魚ではないですよ。
下記に端的にまとめてあります。(最初から端的に言えよという・・・w)
https://ameblo.jp/apfarmk/entry-12312555645.html
長くなってしまいましたが、よいアピストライフを。
*ショップのカートに魚いねぇじゃん!!!ってなると思いますが在庫は結構おりますので問い合わせよりお尋ね下さいませ。